2010年4月1日木曜日

報告書の書き方 Ⅲ ―提出のタイミング―

 前稿二回で、逆三角形法による「情報のレイアウト」、報告書の提出先によって報告内容を変化させる「情報のポージング」についてご紹介した。今回はそれに加えて、「提出のタイミング」についてお話したい。いつも提出を急かされる報告書。では、いつ出すのが適切なのだろうか。本コラムでは、筆者が考える一つの基準と、急かされるプレッシャーを回避する術について考えてみたい。

【 “時間の区切り”を意識せよ 】

 「一ヶ月経ってもまだ報告書が来ない」と企業側。「まだ一ヶ月しか経ってないから出来てない」とNPO。さて、どちらが正しいのだろうか。一ヶ月が長いのか短いのかは、当事者の主観論。筆者としては、どちらも正しくないと思っている。これは、企画終了後○○日までに、という「時間の経過」を基準として報告書の提出期限を考えているから起こる問題だ。
 意識していただきたいのは、時間の経過ではなく「区切り」。つまり、「月度」「四半期」「年度」など、企業側の事業期間がなんらかの形で区切られていることと、報告書は密接に関係している。企業にとって区切りとは「その期間の成果を評価」し、「次の期間のための計画を作る」タイミング。多くは会議を開くなどして、こうしたことを話し合っている。企業が報告書を必要とするタイミングとは、こうした場面。「報告書は、企画終了後の直近の“区切り”までに出すのが望ましい」となる。
 最も一般的な区切りは「月度」で、当月に実施した企画は、当月内になんらかの評価をするのが基本。「今月に協賛したが、結果がまだ分からない」では、担当者は赤っ恥だ。つまり、例え3月20日に実施したイベントでも、支援企業の月度会議が月末の3月25日だった場合、たった4~5日間で報告書を作成しなければならいことになる。

【 二段階報告のススメ 】

 「えー!そんなん無理―!」という当理事長の悲鳴が聞こえてきそうだが、これはさすがに筆者も同感。そのために本番後に徹夜するのは、少々理不尽だ。これを回避するテクニックとしてオススメしたいのが、「二段階報告」だ。報告書は、“いつ提出するか”で求められるレベルが違う。当然、提出が遅くなればなるほど、濃い内容を求められる。逆に、提出が早いほど、例えば実施直後の報告は「速報」として最低限の情報でも許される。企業が月度会議で求めているレベルは、実は速報ベースでも事が足りるのが実情。企業担当者だって、数日前に実施した企画を完璧に分析できているとは思っていない。そうした共通理解を一瞬で得る魔法の呪文「速報ベースのご報告ですが・・・」。翻訳すると「まだ終わったばかりでちゃんと検証できていないけど、概ねこんな内容でした。詳細部分は、検証次第では報告内容が変る可能性がありますが、ご了承下さい。」という意味。実に便利な呪文で、実際の企業内会議でもよく使われている。
 「二段階報告」とは、こうした事情を考慮して「速報」と「正式」二つの報告を行う方法だ。速報の場合は、少なくともイベント実施の翌日までに、下記のような内容をメールでもいいので報告しておく。A4一枚にまとめれば、なお良し。あくまで速報なので、ややこしい評価は不要、主観論かつごく短文でOKだ。ともかく「無事に終わって、良い感じでした。ご支援感謝」ということが伝われば、企業は安心するものだ。「後片付けや打ち上げもあるんだから作業時間が取れない!」とのご意見もあろうが、慣れればたいして時間はかからない。最近はモバイル環境だって進化している。携帯電話で日本中どこからでも「なう。」とつぶやくことが出来るご時世、そうした時間と機材を少し割けば、そう難しくは無いはずだ。

<速報報告に必要な内容例>
謝辞   :支援してくれた企画が終了したことへの感謝
問題点  :事故やトラブルの有無
データ  :5W1Hなどのデータ、来場者数などの規模感
所感   :関与者や会場の雰囲気、作品の完成度などの所感
特記   :報道取材の有無、その他
ビジュアル:写真を1~2枚

【 ひと手間かければ、効果がアップ 】

 ちなみに「報道取材の有無」は、筆者としてはぜひとも報告して欲しい項目。メディア露出は企業にとって一大事。記事掲載は、その企画にニュース性があったことの証拠であり、企画を評価する際の一つの指針となる。加えて、記事という「第三者の視点による評価」を得ることで、活動への理解を周囲に促す効果も大きい。記事が出ることが予め把握できていれば、事前に関与者に周知しておくことで、こうした機会を有効に活用することが出来る。事前に「知っている」か「知らない」かで、得られる成果は大きく違う。速報報告ならではのメリットを活かしていただきたいものだ。

 二段階報告は手間が増えるように感じるかもしれないが、速報報告の内容は、そのまま正式な報告のエッセンスとして活用できるから無駄にはならない。では、速報報告書で当面の督促は回避できたとして、正式な報告書はいつ出せばよいのか。これは、「然るべき区切りまで」と言うしかない。報告書の作成者や提出先によっても事情は違う。事業規模によっても報告書作成にかかる時間は一定ではない。大切なのは、双方にとって妥当だと思われる報告書の提出日を、事前に相談して決めておくことだ。そして、決めた期限は必ず守る。そうすれば提出を急かされることは、徐々に減っていくはずだ。

*次号は、手早く速報報告を作成するための「裏ワザ」をご紹介予定です。